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黒豆

白玉が子猫の時は噛み癖がひどくて、

私たちの手はいつも傷だらけだった。

幼くして家族とはぐれてしまったから

遊び方を知らなかったんだね。

いつの間に覚えたんだろう。

黒豆が来てからは、すっかり治ってしまった。

私の手にじゃれる白玉の優しい力加減に、

何だか涙が出そうになる。

 

 

新は「ママ」。

私は「お母さん」。

いつの間にかそんな呼び方になっている。

子供を産んだことがある人には、

笑われてしまうかもしれないね。

 

 

ショーケースの中であんまり情けない顔をしていたから

万札を数枚払って連れて帰った。

私が躊躇しない金額だから、猫としては破格だったに違いないが

動物を金で買ったという罪悪感がいつまでも残った。

新は反対こそしなかったが、良い顔はしなかった。

 

 

カリモクのソファー、新調したばかりのブラインド、新しい畳。

ボロボロ。

猫は飼いやすいなんて嘘だ。

来て数日間は下痢が酷く、心配を通り越して苛々した。

不安と寂しさからか、夜鳴きが続き、2時間おきに起きた。

家中の色んな物をかじっては吐いて、

世話をする新も次第に苛立っていった。

触られるのは嫌がらないけれど、自分から来ることはない。

3ヶ月、懐かなかった。

そんな矢先、まだ小さいお前は白玉に怪我をさせたんだ。

白玉の目が治るまで2週間かかった。

「やっぱり黒豆を可愛いと思えない。愛せない」

ママが言った。

 

 

寝不足が重なり、神経が参ってしまいそうだった。

新の実家に貰ってもらおうかという話も出た。

もう少しだけ様子を見よう。

辛抱強く黒豆に接してきたつもりだったが

本音ではもう駄目だと思っていた。

 

 

「ねえ頼。黒ちゃんって、話かけるだけでゴロゴロ言うよ」

3ヶ月を過ぎたあたりから、急激に懐きだした。

私と新が並んで座っていると必ず真ん中を陣取るし、

食事時にはちゃぶ台の中央に座る。

お前はおかずか。

トイレも風呂も、移動すればどこにでもついてくる。

夜は新と一緒にベッドに入る。

私たちの生活に、一生懸命合わせようとしてくれる黒豆を

心底可愛いと思った。

この子とやっていけるだろうかという不安は、

私の罪悪感と一緒に消えていった。

ごめんねお母さん、一度でもお前を手放そうとして。

 

 

 

白玉をおんぶしながら黒豆を抱っこして、

ベランダから外を眺める。

新「おうおう、大変ですな。笑」

頼「ほれ、ママんとこ行け」

愛せないと言っていた新が、

ぐりぐりと頬擦りをして黒豆にキスをする。

・・・羨ましい。

お隣さんから赤ん坊の凄まじい泣き声が聞こえる。

昨日も夜泣き、すごかったな。

お母さんは大変だ。

 

 

考えてみれば私たち、全員血の繋がりもない他人だね。

そりゃあ、慣れるのに時間もかかるってもんだよ。

悪戯っ子は相変わらずだけど、

何が悪いことなのかはちゃんと分かっている。

叱られそうになると一目散に風呂椅子の中に逃げこむ。

頭隠して尻隠さず。

2066

出てくるのをじっと待っていると、

観念しておずおずと私の足元までやって来るのが笑える。

可愛くて可愛くて。

 

私にも、母性本能なんてものがあるのかな。

 

 

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書き散らし」カテゴリの記事

コメント

黒豆そんな大変だったんだね。

狭いショーケースに入ってることもストレスだろうし
そこから新しい家にきて
そこには知らない二人、知らない猫がいて
黒豆にとっても不安やストレスがあったり
どういう状況、どんな人・猫
自分はどういう扱いをうけるとか
色々慣れるまで大変だったんだろうね。

みんな血は繋がってないけど
家族だね。

頭隠して尻隠さず
かわいすぎだわconfident

投稿: 犬 | 2010年2月16日 (火) 09時04分

そんな事があったんですね・・・
ブログに載っている黒豆君、白玉くん、お二人からはまったく想像も出来ないいろんなことがあったんですね。

確かに、たった一人で大きな人間やしらない先輩猫のいる場所にきたんだから、不安いっぱいだったのかもしれないですね。
3ヶ月をかけて、ゆっくりしっかり家族になっていったんですね。

うちは、2週間くらい下痢がひどくて家にいる事が多い彼女が参ってしまってました。それに加えて最初はしばらく、夜中に走ったりとかなり騒がしくしてたんですが、いつの頃からちゃんと夜は寝るようになりましたね。今となっては懐かしい思い出のように感じます。
そして、今ではこの存在が、たった2年ほど前にはいなかったなんて信じられないような感じです。

黒豆くん、しっぽが太くなってる!(笑)

投稿: シータの彼女 | 2010年2月16日 (火) 18時05分

なんだか読ませていただいて涙が出てしまいそうでしたweep

何事も良い面ばかりではないんですよね…。
でも、それを見せない頼さんは、やっぱり分かってるなぁ。色々な意味でそう思いましたconfident

家族4人、これからも沢山の思い出が出来るでしょうね。
それを後になって「こんな事もあったね」と幸せな気持ちで想いだせることは何よりも本当の幸せかもしれないな…そんな風に思いましたhappy01

そんな幸せのおすそ分けをこれからも楽しみにしてますpaper

投稿: ひろ | 2010年2月16日 (火) 23時13分

雨降って地固まるですねclover
一時はちょっと心配でしたが、今はすっかり幸せ家族ですね。よかったです。

お仕事やお引越し、育児、昨年から転機続きで何かとお疲れ様でした。これからも頼さん新さんらしく、4人で支えあい、ゆっくりと穏やかに過ごせることを願っています。

私も、猫って本当に優しいなと思うことが沢山あります。そんな猫たちの姿を見て、自分も優しくありたいといつも感じています。
小さな命の中で一生懸命生きている子たちだから、私と一緒にいてくれる時間を大切にしたいとより一層思いました。
頼さん、素敵なブログありがとう★

投稿: 日猫 | 2010年2月17日 (水) 10時30分

出産したばかりの母親は実のところそんなに赤ちゃんの事「愛しい」と思えないそうですよ。毎日赤ちゃんと触れ合ってるうちに母性を刺激するホルモンが分泌されるそうです。赤ちゃんは母親に触ってもらってこそ成長ホルモンが分泌されるんだそうですよ。不思議だと思うと同時に自然にうまいことできてるなーと関心しますね。
絆と時間が母性とか愛情とかも育てるのですね♪
頼さんにはしっかりと母性が備わってますよ。だって文章だってコメントだってとても愛に溢れてます。今回も癒されましたwありがとうございます♪

投稿: susi | 2010年2月17日 (水) 10時48分

次女がきてから長女は下痢、次女が発熱しては長女に飛び火、そしてふたりしてしみしみ結膜炎!!
そして今、我が家にも平和がやってきました。

新ママ、頼母さん、辛抱強くがんばったね。
子育てって、こどもと一緒に親も成長するんだって。
うちらはまだまだだけど★
ひとつひとつの困難を乗り越えて絆が深まってゆくね。

ぐりぐりと頬擦りをしてキス…ココロが温まりました☆

投稿: ぷちえ☆ | 2010年2月18日 (木) 17時47分

>犬さん
本当に手の掛かる子です。
構ってほしくてわざと悪戯しているようにも見えます。
逃げ足が早いんですよ。笑
隠しきれていないしっぽを引っ張ると
慌てて隠す仕草が可愛いです。

>シータさんの彼女さん
来たばかりの頃は白玉も警戒して寄りつかなかったので
寂しくて仕方なかったのでしょうね。
小さい体で一生懸命耐えていたのだと思います。
下痢は軽視してはいけないと言いますから
心配しますよね。
夜中に走り回って睡眠を妨げられることは
今でも結構あります。笑
黒豆のしっぽは
長毛種の名残でしょうかね。

>ひろさん
新には泣き言を漏らすこともありました。笑
人間同士でもうまくいかないことばかりなのに
まして種類が違えば当然ですよね。笑
数年後に笑い話になるように
何事も誠実に向き合っていければいいなと思います。
いつも有難うございます。

>日猫さん
もう少しで地滑りを起こしそうでした。
今でも週に2日は寝不足です。笑
世のお母さんを尊敬しますよ。
そうですね、賢くて気まぐれで時々優しくて、
どうしても愛してしまいます。
子育て以外は特に大変だと感じなかったのが不思議です。笑
まだまだ手探りですので
色々教えてください。

>susiさん
10ヶ月もお腹の中で育てたお母さんでさえ、そうなのですね・・・
susiさんに励まされてばかりで。笑
子猫は誰だって可愛いですものね。
母性とは違います。
猫たちが大きくなるにつれ、愛おしいと思う感情は
私の中のそれなのでしょうか。
本当ですか・・・
う、嬉しい。

投稿: 頼 | 2010年2月24日 (水) 12時33分

>ぷちえ☆ さん
そういえばお宅のお嬢さんも病院通いされてましたね。
うちは白玉の目薬代だけで済んで良かったものです。笑
お二人もお疲れさまでした。
猫たちがあんまり急いで成長するものだから
付いていくのに必死です・・・
今や新も、黒豆に惜しげなく愛情を注いでいます。
そのせいで体がもりもりと大きくなってきている気がします。

投稿: 頼 | 2010年2月24日 (水) 12時46分

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